久々にがんばって料理をしてみました。
それが、これ、デビル・カリー( Devil Curry, Curry Devil, Curry Debalなど、 表記はお店や人によって若干異なりますが、気にしないでください。マレーシアですから)。
これはユーラシアン、正確にいうと、マレーシアン・ポーチュギーズと自称するマイノリティー・グループのお料理です。彼らはその昔、マラッカを支配したポルトガル人の末裔を指し、プラナカンのように現地人との婚姻などにより、今ではほとんど現地化しましたが、まだ独自の料理、習慣、言語を持っている人々です(彼らの多くはカトリック)。彼らの宗教はクリスタンと呼ばれ、その料理もクリスタン料理と呼ばれます。私たちがプラナカン同様に強い関心を持っているグループで、シンガポールにもユーラシアン協会があり、マレーシアのマラッカには彼らの居住区があります。
残念ながら、クリスタンの料理を食べさせるお店はほとんどありません。マラッカにはポルトガル・スクエアというのがあり、観光客を相手に料理やポルトガル風の踊りを見せたりしています。しかし、クリスタンの文化とは何か、ということをきちんと伝えきれていないのではと思います。長年シンガポールに住んでいたポルトガル人の友人が、「マラッカにはがっかりした。一体どこがポルトガルなのか?」と憤慨して帰ってきましたが、おそらく、「現地化したポルトガルの末裔」だという認識なくポルトガル広場に行けば、そういう感想を持つでしょう。そんな感想が書かれた日本のガイドブックも少なくありません。
ところがそんな感想で終わってしまっては大変もったいないほど、クリスタンは豊かな食文化を持っているのです。マラッカに有名なクリスタン料理本の著者、セリーヌ・マーベック女史がおりますが、彼女のレシピ本はいつ見てもよだれが出ます。ポルトガル人はこの地にアフリカやインドの味を持ち込み、やがてブラジルからパイナップルなどももたらします。彼女の本で紹介されている料理の数々はポルトガルが制覇した世界各地の香りがしますし、本場ポルトガル料理にも負けないほど、手の混んだ、複雑でいて完成度の高い料理が多いように思います。しかもそのバラエティーは実に豊富です。
マラッカにおけるポルトガル支配は短命に終わり、オランダによってこの地を追われてしまいます。一方でマカオは1999年までポルトガルの支配下にありました。マカオにもマカオ料理なる、現地やアフリカ、インド、マラッカの影響をもつ料理が存在していますが、純ポルトガル料理も広く普及しています。しかし支配者がオランダに変わり、肩身の狭い思いをしてきたマラッカのクリスタンたちは、純ポルトガル料理からは次第に離れ、この地独特のフュージョン料理を生み出していくのです。
さて、前置きが長くなりましたが、デビル・カリーはクリスタンのクリスマスには欠かせない料理です。といっても、当日ではなく、翌日のボクシング・デーに食べられたもの。クリスマスのごちそうの残り物で作るものだそうです。ですから、ソーセージとか、ターキーだとか、ローストビーフとかをごっちゃに入れたのだそうです。なぜデビルかというと、悪魔のように辛いから、と聞きましたが、クリスタンの料理ってどれも激辛ばっかですけどね。
この料理はマスタードシードが味の決め手で、お酢やタマリンドもたっぷり使う酸味の強いカレーです。ドライチリ、レモングラス、ガランガル、しょうが、ニンニク、ターメリック、キャンドルナッツなどをたっぷり使っています。辛いだけでなく、大変スパイシーです。
マラッカではポルトガル広場以外でも、ニョニャ料理屋でも結構作って出しています。シンガポールではユーラシアン料理店(Casa Bom Ventoなど)で味わえます。
シンガポールにはメアリー・ゴメス女史がおり、ユーラシア料理の本を出されています。3年前プラナカン・フェスティバルでお会いしたことがありました。ポルトガル風の顔をしたおばさんがいたので、もしやと思い、声をかけたらご本人でした。最近彼女は新しいレシピ本を出版しましたが、ユーラシアン料理ではなく、シンガポールのローカル料理全般の本でした。ユーラシアン料理では売れないからでしょうか?こんな素晴らしい料理の数々が、シンガポールですら評価されない(というか、まったく知られていない)のが大変残念でなりません。
それが、これ、デビル・カリー( Devil Curry, Curry Devil, Curry Debalなど、 表記はお店や人によって若干異なりますが、気にしないでください。マレーシアですから)。
これはユーラシアン、正確にいうと、マレーシアン・ポーチュギーズと自称するマイノリティー・グループのお料理です。彼らはその昔、マラッカを支配したポルトガル人の末裔を指し、プラナカンのように現地人との婚姻などにより、今ではほとんど現地化しましたが、まだ独自の料理、習慣、言語を持っている人々です(彼らの多くはカトリック)。彼らの宗教はクリスタンと呼ばれ、その料理もクリスタン料理と呼ばれます。私たちがプラナカン同様に強い関心を持っているグループで、シンガポールにもユーラシアン協会があり、マレーシアのマラッカには彼らの居住区があります。
残念ながら、クリスタンの料理を食べさせるお店はほとんどありません。マラッカにはポルトガル・スクエアというのがあり、観光客を相手に料理やポルトガル風の踊りを見せたりしています。しかし、クリスタンの文化とは何か、ということをきちんと伝えきれていないのではと思います。長年シンガポールに住んでいたポルトガル人の友人が、「マラッカにはがっかりした。一体どこがポルトガルなのか?」と憤慨して帰ってきましたが、おそらく、「現地化したポルトガルの末裔」だという認識なくポルトガル広場に行けば、そういう感想を持つでしょう。そんな感想が書かれた日本のガイドブックも少なくありません。
ところがそんな感想で終わってしまっては大変もったいないほど、クリスタンは豊かな食文化を持っているのです。マラッカに有名なクリスタン料理本の著者、セリーヌ・マーベック女史がおりますが、彼女のレシピ本はいつ見てもよだれが出ます。ポルトガル人はこの地にアフリカやインドの味を持ち込み、やがてブラジルからパイナップルなどももたらします。彼女の本で紹介されている料理の数々はポルトガルが制覇した世界各地の香りがしますし、本場ポルトガル料理にも負けないほど、手の混んだ、複雑でいて完成度の高い料理が多いように思います。しかもそのバラエティーは実に豊富です。
マラッカにおけるポルトガル支配は短命に終わり、オランダによってこの地を追われてしまいます。一方でマカオは1999年までポルトガルの支配下にありました。マカオにもマカオ料理なる、現地やアフリカ、インド、マラッカの影響をもつ料理が存在していますが、純ポルトガル料理も広く普及しています。しかし支配者がオランダに変わり、肩身の狭い思いをしてきたマラッカのクリスタンたちは、純ポルトガル料理からは次第に離れ、この地独特のフュージョン料理を生み出していくのです。
さて、前置きが長くなりましたが、デビル・カリーはクリスタンのクリスマスには欠かせない料理です。といっても、当日ではなく、翌日のボクシング・デーに食べられたもの。クリスマスのごちそうの残り物で作るものだそうです。ですから、ソーセージとか、ターキーだとか、ローストビーフとかをごっちゃに入れたのだそうです。なぜデビルかというと、悪魔のように辛いから、と聞きましたが、クリスタンの料理ってどれも激辛ばっかですけどね。
この料理はマスタードシードが味の決め手で、お酢やタマリンドもたっぷり使う酸味の強いカレーです。ドライチリ、レモングラス、ガランガル、しょうが、ニンニク、ターメリック、キャンドルナッツなどをたっぷり使っています。辛いだけでなく、大変スパイシーです。
マラッカではポルトガル広場以外でも、ニョニャ料理屋でも結構作って出しています。シンガポールではユーラシアン料理店(Casa Bom Ventoなど)で味わえます。
シンガポールにはメアリー・ゴメス女史がおり、ユーラシア料理の本を出されています。3年前プラナカン・フェスティバルでお会いしたことがありました。ポルトガル風の顔をしたおばさんがいたので、もしやと思い、声をかけたらご本人でした。最近彼女は新しいレシピ本を出版しましたが、ユーラシアン料理ではなく、シンガポールのローカル料理全般の本でした。ユーラシアン料理では売れないからでしょうか?こんな素晴らしい料理の数々が、シンガポールですら評価されない(というか、まったく知られていない)のが大変残念でなりません。
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- 無題
いや、手のかかる料理をひさびさにした、って意味ですよ(笑)。
ブレンダーではなく、石すりこぎでスパイスやハーブつぶしてペースト作るところから始めますから。弱火でペースト炒めるのも30分くらいかかります。
ものぐさには勇気がいるんです。
ブレンダーではなく、石すりこぎでスパイスやハーブつぶしてペースト作るところから始めますから。弱火でペースト炒めるのも30分くらいかかります。
ものぐさには勇気がいるんです。
- 無題
はじめまして。
僕もマラッカでポルトガル広場に行って
拍子抜けした1人です。
一体どこがポルトガルなのか?
なんかマレー料理みたいじゃないですか。
でもたしかに料理は結構おいしかったです。
ポルトガル広場という名前だと
誤解を生むと思います。
今回こちらの記事を読ませていただいて、
そんな歴史と文化があったのかと
初めて認識させていただきました。
ありがとうございます。
僕もマラッカでポルトガル広場に行って
拍子抜けした1人です。
一体どこがポルトガルなのか?
なんかマレー料理みたいじゃないですか。
でもたしかに料理は結構おいしかったです。
ポルトガル広場という名前だと
誤解を生むと思います。
今回こちらの記事を読ませていただいて、
そんな歴史と文化があったのかと
初めて認識させていただきました。
ありがとうございます。
- 無題
Jugemさん
いらっしゃいませ。
私もあの名称はどうかとずっと思っています。それともっとクリスタンらしい料理を食べさせれば良いのになあと思うのですが。
大さん
不勉強だなんて。大さんがクリスタンのカレーのことまで知ってたら、ほんと私たちの出る幕なくなりますよ。
でも、専門家には是非一度食べていただきたい味です。
いらっしゃいませ。
私もあの名称はどうかとずっと思っています。それともっとクリスタンらしい料理を食べさせれば良いのになあと思うのですが。
大さん
不勉強だなんて。大さんがクリスタンのカレーのことまで知ってたら、ほんと私たちの出る幕なくなりますよ。
でも、専門家には是非一度食べていただきたい味です。
- 無題
歴史があって、人種が交差し、そして食文化が生まれる。
マラッカってすんごいところですね!!!
大航海時代のマラッカは世界でも有数の人種のるつぼだった~~~ってことが、この料理ひとつ見ても分かります。
このブログ、本当にすごいです。これからもおもしろい料理をバンバン作って見せてください。
日本で食べられる店はないのかなぁ?
マラッカってすんごいところですね!!!
大航海時代のマラッカは世界でも有数の人種のるつぼだった~~~ってことが、この料理ひとつ見ても分かります。
このブログ、本当にすごいです。これからもおもしろい料理をバンバン作って見せてください。
日本で食べられる店はないのかなぁ?
- 無題
おひるねさん
いつもコメントをありがとうございます。
何度かブログでも紹介していますが、日本では
神奈川県大和市にある「Makan Makan」というお店で「カリーデバルを食べたい」と前もってリクエストをされたら、本場顔負けのカリーデバルにありつけます。
このデバル、食べるとポルトガルやらゴアやら、本当に大航海時代の味、かくありなん、と思わせる豊かな味わいです。
クリスマスに残った肉を沢山入れるものですから、その脂っこさをマスタード・シードとお酢で緩和しており、つい食べ進んでしまう恐ろしいカリーでもあります。まさにデビルか??
ご興味がありましたら、是非試してみてください。
ちなみに、クリスタン料理(ユーラシアン料理も含む)と、ニョニャ料理は密接な関係にあり、
それまで酸味と言ったら、柑橘系ですませていたニョニャ料理に「お酢」を使うことをもたらしたのも、このクリスタン料理から、と言われています。
ピクルスやマリネーなどの調理法も影響を受けています。
クリスタン&ユーラシアン料理は侮れないですよ。
いつもコメントをありがとうございます。
何度かブログでも紹介していますが、日本では
神奈川県大和市にある「Makan Makan」というお店で「カリーデバルを食べたい」と前もってリクエストをされたら、本場顔負けのカリーデバルにありつけます。
このデバル、食べるとポルトガルやらゴアやら、本当に大航海時代の味、かくありなん、と思わせる豊かな味わいです。
クリスマスに残った肉を沢山入れるものですから、その脂っこさをマスタード・シードとお酢で緩和しており、つい食べ進んでしまう恐ろしいカリーでもあります。まさにデビルか??
ご興味がありましたら、是非試してみてください。
ちなみに、クリスタン料理(ユーラシアン料理も含む)と、ニョニャ料理は密接な関係にあり、
それまで酸味と言ったら、柑橘系ですませていたニョニャ料理に「お酢」を使うことをもたらしたのも、このクリスタン料理から、と言われています。
ピクルスやマリネーなどの調理法も影響を受けています。
クリスタン&ユーラシアン料理は侮れないですよ。
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プラナカンを中心に、シンガポール・マレーシアの話題をお届け。食べ物・旅行の話題が中心です。
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HN:
Miki & Chie
性別:
女性
自己紹介:
シンガポールとペナンに住んで20数年、プラナカン協会会員です。ライター&コーディネート業務に携わっています。ご依頼・お問い合わせは下記ホームページからお願いいたします。
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