私にとって今年で2度目となるイナクラフト(インドネシア全国工芸品見本市)のため、ジャカルタを訪れました。
毎年開催されているこの見本市はインドネシア中からクラフト業者が集まります。主にバティックなどのテキスタイルや、クバヤなどのファッションを中心に、スパ用品、民芸品、家具、陶芸、雑貨などさまざまな業者が勢ぞろい。
プラナカン研究の一環として、クバヤ、バティックを見る・買うだけでなく、インドネシア・プラナカンについての話を聞く、この二つの目的で行ってまいりました。
イナクラフトはちょっとあとにして、まずは、ジャカルタのニョニャ料理レストランをご紹介します。
インドネシアのジャワ島やスマトラ島にもプラナカンと呼ばれる人々がいます。ただ、定義としては、この土地にやってきた中国人移民と現地人の混血の人々の子孫を指すようですが、混血の割合は非常に高いように見受けました。マレー半島のプラナカンは混血がキーワードではなく、家柄などが相当重視されますから、インドネシアでもそういう「特別階級の人々」を指すのかどうかはまだ調べる必要があります。ただ、今回お友達になったプラナカンのマダムは明らかに上流階級の方で、品もよろしい方でした。財を成した人は多いようです。また、ニョニャとババという呼び方も、現代では意味合いが変わってしまっており、単に外国人の奥さんのことをニョニャと呼ぶようで、日本人駐在員の奥さんたちもニョニャと呼ばれています。
そんな背景があるのですが、ニョニャ料理レストランで出すものは、外国人の奥さんの料理ではなく、プラナカンの料理のことを指しています。
↑Dapur Babah Elite
しかしメニューを見ると、さっぱり訳わかりません。マラッカ、シンガ、ペナンでもそれぞれ違いはありますが、共通部分はあります。しかしインドネシアのプラナカン料理は、これが本当に現地でプラナカン料理としての地位を築いているのかどうかすら、よくわかりません。店員はマレー系のインドネシア人ばかりで、ちょっと話を聞いても説明できないようなのばかりですから、これはじっくりとプラナカンの人たちと話をするしかないようです。
ま、難しいことはさておき、今回お邪魔したお店は2軒、どちらもセンス抜群のインテリアが自慢の、おしゃれなお店です。オーナーはプラナカンだそうです。
まずはKedai Tiga Nyonya。
3人のニョニャの店、という意味のこのお店は本当に可愛らしい女性好みのインテリアです。ところどころにレトロな家具、タイルが飾られています。お料理もなかなかのもので、私のおすすめはロジャというサラダです。シンガポールやマレーシアのロジャとはまったく違います。ピーナッツ、ゴマがベースの白っぽいソースで、なんだかサラダクリームのような味わいのソースなのです。デザートも10種類くらいあり、かなり充実しています。私が気に入っているのは、Es Campurというアイスカチャンで、ヤング・ココナッツの実、タペ(ヤム芋を発酵させたもの)、ゼリーなどがたくさん入ってます。肉団子のスープなどもあり、いろいろ演出も凝ってますよ。シンガポールにKedai Tiga Babaという店があるのですが、パクったのでしょうか(シンガポールの方が)。食べるのに夢中で、写真撮ってなくてすみません。
もう一軒は、Dapur Babah Elite。
こちらは雰囲気もうって変わった、ちょっとクラブのようなかっこいい店内です。シンガポールのインドシンみたいな感じ、といったらわかる人もいるかもしれませんが、なんつったって、本物の、それももう値のつけようがないような骨董が並んでいるのですから、格はぜんぜんこちらのが上!と言いたいところ。インドネシアで展開するおしゃれなTuguホテルとオーナーが同じだそうで、インテリアを見に訪れる価値あり。古い中国風の木の扉の隣にエンジェルのオブジェ、など、東西のミスマッチがプラナカン・チックです。私たちもお腹がいっぱいだったので、デザートとお茶だけでお邪魔しました。写真のデザートはマレー半島でいうスリカヤというクエをムースにしたような感じ、パンダンとココナッツが優しい味わいです。お茶にはシナモンとカルダモン入りのお茶を頼みました。インドネシアのカルダモンは朝顔の種のように丸みがあり、心地よい穏やかな香りです。
どちらも観光客が訪れやすい市内中心部にあります。
Kedai Tiga Nyonya
Jln Wahid Hasyim No.73
Tel: 3160971
Dapur Babah Elite
Jln Veteran 1/18-19
Tel: 70602256
プラナカンの研究をして切り離せないのが華僑の歴史です。
とくに清朝の混乱期には北米など世界中に中国人は移民していきました。東南アジアにやってきた中国人移民は南洋移民と呼ばれます。ここシンガポールやマレーシアはこれらの南洋移民の子孫が国民の多数を占めている土地です。
シンガポールの観光名所ハウパービラも閑古鳥が鳴いて久しく、廃園になるなどあまり評判も芳しくなかったのですが、2年ほど前、ここに華僑の歴史を伝える博物館、Hua Song Museumができました。
ガイドブックの取材で行きましたが、最初はどうせあのハウパービラだから、とバカにしてたのですが、内容は非常に興味深いものでした。シンガポールの歴史、生活に非常に深く関わっているからです。
命からがら、奴隷船同然のおんぼろ船にまさに缶詰状態で海を渡ってきた中国人たちの悲惨な歴史を紹介しています。当時マレー半島は英国植民地でした。さまざまな重圧、しがらみ、古い伝統に苦しんできた中国の民衆は「自由主義」を掲げていた英国の地を目指してやってきました。が、現実的には、「契約書」つきの奴隷としてやってきたようなものでした。悲惨な労働条件、そしてアヘン地獄。子供や女性の人身売買、そんな移民たちの歴史を模型や蝋人形でわかりやすく展示しています。
世界に分布する華僑のデータ、生活様式の再現など、なかなかよくできています。さらに、博物館に併設されている中国料理のレストラン、とてもきれいな高級レストランです。取材は昼時だったのですが、ビジネスマンたちの会食でほぼ満席でした。味見はしませんでしたが、なかなかGoodなのかもしれませんね。
シンガポール、行きつくした~、もう行くところないよ、とお嘆きの方、暇つぶしがてらに覗いてみてはどうでしょうか。
Hua Song Museum 華頌館
262 Pasir Panjang Rd., Haw Par Villa
Tel:6339-6833
12:00~19:00
かなり美味しいです。カレーパン好きの日本に、どうしてこれがないのかな??ビジネスを始めたらめちゃくちゃ儲かるかも??・・・なんて邪心を抱きながら毎回食べていました。
英国式マナーを身につけていた「上流きどり」のプラナカンたちは、中国からやってきたばかりの移民たちを見下したのです。新客たちは奴隷同然にやってきた大変貧しい人々で、教養もマナーも知らない粗暴な人間ばかりでしたから、当然といえば当然です。
現代のシンガポールにも今、中国からの新移民たちが増えています。シンガポール人たちは「メインランド・チャイニーズ」と言って彼らを馬鹿にしています。たしかにシンガポール人のように英語が話せず、中国式の粗野な振る舞い(大声でしゃべる、マナーが悪い、奇妙なファッションなど)のメインランド・チャイニーズには辟易するところがあります。ニュージーランドやオーストラリアでもこのような中国人移民が増大しており、社会問題にもなっています。シンガポールでは語学留学と称してやってきては、不法就労している人たちもたくさんいます。ゲイランには今、中国からやってきた売春婦が溢れています。(もちろん、大学卒のエリートたちもたくさん移民してきていますので、メインランド・チャイニーズがすべて見下されているわけではありません)
このシンガポール人VSメインランド・チャイニーズを見るにつけ、プラナカンVS新客のことを思い出すのです。
しかし、私としては、彼らの流入が大変ありがたいと思うこともあります。それは、彼らが大陸の味をシンガポールにもたらしてくれたからです。
シンガポールの中国料理は南方の影響が濃く、日本で食べる中国料理はもちろん、中国本土や香港で食べられているような中国料理とも異質です。そんな南方式中国料理に耐えられない新移民の人たちが自分たちの口にあう料理を出すようになったのです。シンガポールやマレーシアの中国人は塩気のある味が苦手で、四川料理や中国北部の料理が食べられませんが、これらの北方の料理は私たち日本人の口にもよく合います。
そんな中国料理を出す店がゲイラン地区に溢れています。
本格的な四川料理、北京や満州の料理、ウイグル自治区から来た中国人たちの料理などなど。これらの店のいいところは、麺・餃子がおいしいこと。手打ちですから、手打ちうどんのようにしこしこした麺が食べられます。シンガポールにはこれまで「手工麺」(手打ち麺、の意味)と称するホーカーがたくさんありましたが、パスタマシーンで一回延ばした程度のへニャへニャばかりで、私には不満がいっぱいでした。しかし、メインランド・チャイニーズの皆様のおかげでしこしこの麺が食べられるようになり、非常に喜ばしい限りです。
これらの店で困ることは、メニューが解読不可能なことが多いこと。英語訳がついていても、「はて、さっぱり意味不明」という滅茶苦茶な英語になっていることもあります。中国に何度も旅行している私は、大体見当は付きますが、わからないことも多く、失敗もあります。それから、サービスに問題があることも。一番最初に行った四川料理の店は、味は大変よかったのですが、オーナーのメインランドおばさんが異常にウザイ。こちらが中国語がわからないといってるのにやたらに話しかけてくるくせに気が利かない。絶品マーボー豆腐がでてきたというのに、電話に夢中で、いくら呼んでもご飯を持ってこない!ご飯なしでどうマーボー豆腐を食べろというのか??私がイライラ頂点に達していても、ニコニコ笑いながら、「マンマンツー」(ゆっくりお食べ)と言ってくる。殺したろか?と思ったこと、数回。先日、再度いってみたら味が大分変わってました。あれじゃあー、シェフも逃げるよな、と納得した次第です。それから、メインランドの人たちは味の素が大好きなので、時々味の素たっぷりの料理を出す店もあるので注意です。
↑本場のチンジャオロウスーとは、ピーマンではなく、本当にグリーン・チリを使う物なんですか?? 辛いです!
今のところ、レギュラーで出没しているのは、「北方春餅」という看板のお店。ここは人気の高いお店で、メニューも中国語しかありませんが、英語ができる若いお姉さんがいます。ここの看板にもなっている春餅というのは、春巻きの皮のようなもの、中国版クレープとでもいいましょうか。これで串焼きの肉を包んだり、炒め物を包んだりして食べます。ここは大体の料理が辛いですが、餃子や焼きそば、麺類は子供でもいけます。とくに麺が手打ちでおいしく、ここのチャオメンはおすすめです。
←ジャガイモの千切りを黒酢でサッと炒めたもの。
これも春餅に包んで食べます。
お店はKallang駅から徒歩5分ほど、Geylang Rd.沿いにあります(Jalan Ayerの裏手あたり、中国料理屋がいっぱい並んでます)。
すぐ食べ物の話題に戻るね、私たち。
昔初めてシンガポールに来たころは、香港の味を知っていた私には、シンガポールの点心などはまったくお話にならないと思ったものですが、まあ、最近はローカル飲茶も悪くないかな、と思うようになりました。雰囲気を楽しむという意味で・・・。気軽さもいいです。
ローカル飲茶とは私が勝手に名づけたものですが、高級なレストランなどで出すようなものではなく、チャイナタウンなどの食堂のようなところに、チャイニーズの爺さん連中が集まってだべっているような店のことです。香港にも未だにこういう店があるのかどうか知りませんが、しかし、これが本来の飲茶の姿なのではないかとも思うのです。
まるでトルコあたりのカフェのように、客は男ばっかりで(それもたいていジジイばっか)、ダラダラ茶を飲みながらだべっているのです。そんな飲茶屋もなかなかいいものじゃないか、と思うのです。
そんな飲茶屋が昔シンガポールのチャイナタウンのモスクSt.にありましたが、それが立ち退かされて久しい(どこへ行ったのか・・・)。ローカル飲茶にしては点心の味もまずまずで、ものすごく大きくて具沢山の肉まんがおいしかったです。こういう飲茶屋はシンガポールではホーカーズ・センターなどにはたまにあったりしますが、たいていがゲロまずだし、本当に行きたい店がなくなりました。腹が立つのは、ローカル飲茶レベルの分際で、レストランづらしている店がチャイナタウンあたりに増えていること。
材料には、イカン・テンギリというサワラに似た魚を使うことが多く、それをすり身にし、ココナッツ・クリーム(ココナッツ・ミルクよりも濃厚)とフレッシュ・スパイス&ハーブ類を合わせて葉っぱに包み、炭火で焼いたり蒸したりしたもの。ニョニャの得意料理のひとつだが、産地によって辛さもテクスチャーも葉っぱの種類も、オタの大きさも実に様々。
マラッカで食べるニョニャのオタは、レモングラスやブルージンジャー、ターメリック、カフィア・ライムの葉っぱなどに、生のチリ・パディ(小さくて辛いチリ)とブラチャン(干海老のペーストを炒ったもの)などが入った香ばしくてスパイシーなもの。バナナの葉や、ラパという少し黄色い葉でくるんであることが多い。そのテクスチャーはふんわり仕上げた、でき立てほやほやのカマボコのごとく。特にマラッカの近郊にあるムアーという町はオタがおいしくて有名な町だ。
マラッカのオタに感動しつつ、ペナンに行くとさらに驚きの味に出会えるのだから、オタという料理、単なる魚のすり身などとあなどれない。ベイクしているシンガポールやマラッカのオタと違い、ペナンのオタは蒸しているため水々しく滑らか。
ペナンではオタのことを英語でフィッシュ・ムースと呼ぶように、口の中に入れるとシュワッととろけてしまう、まさにムースのような軽さだ。
初めて食べたのは、ガーニー・ドライブにあるさり気ない屋台街でだったが、香り立つハーブとフレッシュな魚の風味がMixされた典雅な味わいに感激。タイ料理の影響か、ペナンのオタはカフィア・ライムの爽やかな香りが印象的だった。
それに比べて残念なことに、シンガポールで食べるオタはココナッツの油が重たく感じられ、テクスチャーもイマイチ。何といってもオタの命である葉っぱをひらいた時に香りたつ芳香が感じられない。所によっては「魚の鮮度が危ない味」の店も多い。マレーシアのオタを知ってしまってはね~~~。
おすすめ店
(マラッカ)
・Nya Nya(レストラン)G 35 Jln.PM3 Plaza Mahkota Bandar Hilir Tel 06-283-6327
・Baba Charlie Lee (菓子店)72 C. Jln.Tengkera
Tel 06-284-7209
(ペナン)
・New World Café (Siin Se Kai) 10 Swatow Lane.
(シンガポール)
・ニョニャ料理店ならおいしいものにありつけます。
Joo Chiat Rd.のGuan Hoe Soon、PeraMakanなど結構いいですよ。
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