2ヶ月くらい前でしたか、世界ふしぎ発見でマラッカを紹介したときに、燕の巣の家について紹介があったと聞き、驚きました。燕の巣の家はマラッカ、そしてペナンのジョージタウンにとっては問題なのです。そして違法です。なんで日本のテレビはそういうのを面白おかしく紹介しちゃったりするのか、とチエさんも私も頭をかしげていたのです。
燕の巣の家、というのは、民家に燕を呼び寄せ、家の中で燕たちに巣を作らせるものです。古いマラッカやジョージタウンのヘリテージゾーンには人の住まなくなった家がたくさんあります。これらの家を利用して燕たちを呼び込み、そして中に巣を作らせる。これは違法です。しかし、その収益は月に300万円ほどにもなるというのですから、違法業者が後を絶ちません。
なぜ禁止されているか、というと、第一の問題は衛生上の問題です。そう、糞害です。居住地域でこれをやられてはたまりません。そして、燕を呼び寄せるためにチュチュチュンという燕の鳴き声を音響装置を使って延々とならし続けるため、騒音の問題も発生しています。またとくにユネスコ世界遺産エリアで問題視される理由が、歴史的建築の破壊です。
先月ペナンのNGOに協力して、ジョージタウン内の燕の巣の家の調査団に加わり、その実態に触れてきました。
実は私もユネスコエリアの家を買うために何軒も家を見たのですが、その中には燕の巣の家もありました。燕の巣の家ではすべての窓をレンガやコンクリートで固めて外光を一切遮断します。そして家の何ヵ所かにでかい浴槽のような、プールのようなものをつくり、建物内の湿度をぐんと上げます。それはまるで洞窟内にいるかのようでした。中華の高級食材になる燕の巣は、日本に住んでいるような燕ではなく、東南アジアに多いイワツバメで、これらは洞窟に住む習性があるため、洞窟と同じ環境を家の中に作るのです。これでは当然建物はダメになります。
燕たちはある一定の高さから降下して家の中に飛び込みます。そのため、燕の入り口となるタワーのようなものがこれらの家の屋上に作られます。燕の巣の家のビジネスをやっているかどうかは、1)さえずりの音響装置があるかどうか、2)タワーがあるかどうか、3)窓などが遮断されているかどうか、でわかります。
2階から上の階が養殖所になっている建物。こんなに立派な建物をだいなしに
窓が遮断されている。丸い穴は通風口、光は入らないように作られている
表からはまったく見えない屋上のタワー。友人宅の屋上から発見
しかし最近のうるさい取り締まりのために音響装置をはずしている業者も多いのです。鳥たちもいったん住処を見つけると、そこに定住し始めるから、音響装置は不要になってくるのだそうです。
さらに業者たちはあの手この手でカモフラージュを工夫し、一見すてきなアートギャラリーやカフェなんかを一階でやっていたり、屋上のタワーが外からは見えないように隠して作っている家もたくさんあり、摘発調査は難航しました。そのためベテランの調査員の人たちと一緒に家の裏道へ入ってみたり、近所のゴシップ好きそうなお婆ちゃんに話を聞いたりして、一軒ずつ念入りに調査しなくてはなりませんでした。
そのおかげで、お役所の調査結果よりも実に多くの隠れ業者を発見しました。お役所の人たちは賄賂をもらってお目こぼししているケースが多いようで、NGOは今回の資料をもって政府をプッシュし、「容疑の家」を一軒一軒再調査させ、さらにこれをユネスコに報告する予定です(もうその段階にきています)。
チュリアStのインド人街にある建物を裏から見たところ。燕の巣の家であるのは明白なのに、いまだに操業が許されるのは何故?
ここ1〜2週間、ジョージタウンでの燕の巣の家の話題がたてつづけに新聞記事になったのは、私たちの調査をもとにNGOが働きかけたからです。一方、燕の巣の業者たちも負けじと抗議デモをやっていました。「燕が勝手に家に入って来ているだけだ、養殖などやってない」などと図々しい言い訳を掲げ。
燕の巣の養殖は農業地域ならばライセンスを取りさえすれば合法で行えるのです。居住地でやるのが問題なのです。なお、これらの燕の巣は香港や中国から業者が買い付けに来ています。何人かの業者は次々と農業地域に養殖場を移動させ始めています。ジャングルや田畑のど真ん中に不気味な四角い、窓のない(空気孔だけはある)4〜5階建ての建物があれば、それが養殖所です。
旅行者でも燕の巣の家はカンタンに見つけられますよ。ペナンだとチュリア・ストリートの余仁生(ユーヤンサン)という大きな漢方のお店のビルの付近でほぼ一日中燕が飛び交っているのが見られます。大きな燕タワーがこのビルの屋上に堂々と鎮座しています。マラッカだとヒーレンStに何軒かあります。今はもうないかもしれませんが、以前はババハウスに泊ると一晩中チュンチュンチュンというさえずりを聞きながら寝たものです。マラッカで燕の巣の家になっているところは外装が妙にきれいに直されているのが特徴で、しかしすべての窓がピシーッと隙間なく締め切られています。ちょっと注意して観察してみるとわかると思います。
このお手伝いをしてからは、燕の鳴き声が耳につくようになりました。マレーシアの他の土地へ行っても、「あ、燕の巣の家!」とすぐに発見してしまう、今日この頃です。
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