少し時間があいてしまいましたが、クエラピスの続きです。
クエラピスとは、マレー語の言葉のままに解釈すると層(ラピス)を成したケーキ(クエ)のことですが、シンガポールやマレーシアではいつも2種類のクエラピスを楽しんでいます。
ひとつはウイロウ状の色鮮やかな蒸し菓子(特にシンガポールではカラフルなレインボーカラーでお馴染み)こちらは元々中国にある紅白に色づけされた九層になっている餅が伝わったものと思われます。マラッカではクエ・ゲンガン(ババマレー語)として親しまれており、西洋から伝わった焼いたクエラピスとは全く別物です。
焼いたクエラピスも最近はココア色や緑のパンダン色、イチゴ色のみならず、断面が花模様や幾何学模様になった、ぎゃっ!と驚くようなカラフルなものも出回っています。層の数に決まりはありませんが、市販品やインドネシアのものなどは2ミリほどの極薄の層が数えきれないほど重なっているものが多いです。
写真はジョホール・スルタンのお姉様宅で味わった手作りのクエラピス。
赤とココア色のコントラストが何とも愛らしく、可愛らしいものが大好きなお姉様らしいクエラピスでした。薄くスライスしたものをさらにトーストして下さり、半生クッキーのように香ばしく、紅茶とともに優雅なアフタヌーンティーを楽しみました。味の濃いクエラピスはティータイムの王様ですね。
こちらはインドネシア、バリ島のシェフが作ってくれたもの。
かなりスパイスがきいていましたが平岡シェフのクエラピスに似た毎日食べても飽きない、素朴ながらも味わい深い一品でした。
こちらはマラッカから届いたパンダンで味付けをしたもの。
パンダンといっても色だけで香りはゼロ。お味は何とも形容しがたく・・・・いかにも大量生産の工場品といった味で一口でギブアップでした。
下はいつもお邪魔するシンガポールの中国料理屋さんでオマケに出してくれたクエラピス。
形がだいぶ崩れていましたが、手前はローカル菓子大手メーカー「ブンガワンソロ」のもの。ずっしりと重く、しっとり焼き上がった実にリッチな味わいです。その分恐ろしい量のオイルが入っているはずですが……。甘味を引き立たせる塩もスパイスもしっかりきいています。今はエアポートでも買えるブンガワンソロのお菓子ですが、長年シンガポールで親しまれてきた老舗ならではの風格を感じさせる味とでもいいましょうか?
奥はインドネシアからのお土産品。チョコレートの層がモダンな印象を受けます。味はスパイス控えめでクエラピスというより洋菓子のチョコレートケイクそのものといった感じでした。
もともとクエラピスはインドネシアがオランダ領だった頃にオランダから伝わったものという説と、卵黄をたっぷり使ったポルトガルのパンプディングのようなお菓子が、インドのゴアに伝わりミルクレープ状のベビンカというお菓子に変化し、それがマレー半島やフィリピン、マカオなどに伝わったという説もあります。しかし、東南アジアに伝わった西洋菓子のほとんどは、その土地の食材やキッチンの形状に応じて変化をしながら近隣諸国に浸透してゆくので、オリジナルを限定しづらいのが現実です。
とはいえ、シンガポールやマレーシアではクエラピス用のスパイスミックスとして売られているスパイス、主にシナモン、クローブ、ナツメグなどはベルギーやオランダなどで焼かれているスペキュロス・クッキーに使うものと全く同じもの。大航海時代にスパイス王国といわれた国々から採取したスパイスがヨーロッパに持ち込まれクッキーやケーキに使われ、それがまた植民地となった国々にお里帰りしたのでしょうか。
ところで、以前から東南アジアには幾重にも層を成すお菓子がどうして多いの??と平岡シェフと共に疑問に思ってきました。
現地の人にさんざん聞いても「綺麗に見えるから!!」と答える人ばかり(笑)
しかし、今回実際にクエラピスを焼いてみて多分、釜や火の問題があったのだなぁ~と強く感じました。
プラナカンの昔ながらの台所を見てもそうですが、片火だけの土釜でスポンジ系の大きな菓子を焼き上げるには、幾重にも生地を重ねない限り中まで火が通り難かったのではないか?
多くのクエの材料に使われる米粉や芋などは、蒸すことに適しているものが殆どですが、こと西洋から伝わった卵や油脂、小麦粉を使う洋菓子はオーブンで焼く事を前提としたものが多く、大きなケーキを焼くのはさぞ大変だったことでしょう。
クエラピスも昔は炭を上に載せて焼き色をつけたとも言われています。
また、昔ながらの土釜の燃料にはココナッツの殻を使い、えもいわれぬ燻蒸の香りをもたらしたとも言われています。
いずれにせよ、その土地ならではの調理法に工夫を重ね、どんどん変化を遂げていったことは確かでしょう。
うんちくが長くなってしまいましたが、アジアに伝わったバウムクーヘンもどきのクエラピス。今はしっかり現地に根差し、愛され続けるお菓子となりました。これからもそんなお菓子を沢山研究していきたいと思います。
おまけですが、マレーシアのガソリンスタンドで売っていたオモチャのようなケーキ。
段々の中にはサンザシが入っていて、これもある意味クエラピスです。
これを見ると、「綺麗だからねぇ~」と答えていた人たちの意見も大いにアリかな??とも思ってしまいました☆
クエラピスとは、マレー語の言葉のままに解釈すると層(ラピス)を成したケーキ(クエ)のことですが、シンガポールやマレーシアではいつも2種類のクエラピスを楽しんでいます。
ひとつはウイロウ状の色鮮やかな蒸し菓子(特にシンガポールではカラフルなレインボーカラーでお馴染み)こちらは元々中国にある紅白に色づけされた九層になっている餅が伝わったものと思われます。マラッカではクエ・ゲンガン(ババマレー語)として親しまれており、西洋から伝わった焼いたクエラピスとは全く別物です。
焼いたクエラピスも最近はココア色や緑のパンダン色、イチゴ色のみならず、断面が花模様や幾何学模様になった、ぎゃっ!と驚くようなカラフルなものも出回っています。層の数に決まりはありませんが、市販品やインドネシアのものなどは2ミリほどの極薄の層が数えきれないほど重なっているものが多いです。
写真はジョホール・スルタンのお姉様宅で味わった手作りのクエラピス。
赤とココア色のコントラストが何とも愛らしく、可愛らしいものが大好きなお姉様らしいクエラピスでした。薄くスライスしたものをさらにトーストして下さり、半生クッキーのように香ばしく、紅茶とともに優雅なアフタヌーンティーを楽しみました。味の濃いクエラピスはティータイムの王様ですね。
こちらはインドネシア、バリ島のシェフが作ってくれたもの。
かなりスパイスがきいていましたが平岡シェフのクエラピスに似た毎日食べても飽きない、素朴ながらも味わい深い一品でした。
こちらはマラッカから届いたパンダンで味付けをしたもの。
パンダンといっても色だけで香りはゼロ。お味は何とも形容しがたく・・・・いかにも大量生産の工場品といった味で一口でギブアップでした。
下はいつもお邪魔するシンガポールの中国料理屋さんでオマケに出してくれたクエラピス。
形がだいぶ崩れていましたが、手前はローカル菓子大手メーカー「ブンガワンソロ」のもの。ずっしりと重く、しっとり焼き上がった実にリッチな味わいです。その分恐ろしい量のオイルが入っているはずですが……。甘味を引き立たせる塩もスパイスもしっかりきいています。今はエアポートでも買えるブンガワンソロのお菓子ですが、長年シンガポールで親しまれてきた老舗ならではの風格を感じさせる味とでもいいましょうか?
奥はインドネシアからのお土産品。チョコレートの層がモダンな印象を受けます。味はスパイス控えめでクエラピスというより洋菓子のチョコレートケイクそのものといった感じでした。
もともとクエラピスはインドネシアがオランダ領だった頃にオランダから伝わったものという説と、卵黄をたっぷり使ったポルトガルのパンプディングのようなお菓子が、インドのゴアに伝わりミルクレープ状のベビンカというお菓子に変化し、それがマレー半島やフィリピン、マカオなどに伝わったという説もあります。しかし、東南アジアに伝わった西洋菓子のほとんどは、その土地の食材やキッチンの形状に応じて変化をしながら近隣諸国に浸透してゆくので、オリジナルを限定しづらいのが現実です。
とはいえ、シンガポールやマレーシアではクエラピス用のスパイスミックスとして売られているスパイス、主にシナモン、クローブ、ナツメグなどはベルギーやオランダなどで焼かれているスペキュロス・クッキーに使うものと全く同じもの。大航海時代にスパイス王国といわれた国々から採取したスパイスがヨーロッパに持ち込まれクッキーやケーキに使われ、それがまた植民地となった国々にお里帰りしたのでしょうか。
ところで、以前から東南アジアには幾重にも層を成すお菓子がどうして多いの??と平岡シェフと共に疑問に思ってきました。
現地の人にさんざん聞いても「綺麗に見えるから!!」と答える人ばかり(笑)
しかし、今回実際にクエラピスを焼いてみて多分、釜や火の問題があったのだなぁ~と強く感じました。
プラナカンの昔ながらの台所を見てもそうですが、片火だけの土釜でスポンジ系の大きな菓子を焼き上げるには、幾重にも生地を重ねない限り中まで火が通り難かったのではないか?
多くのクエの材料に使われる米粉や芋などは、蒸すことに適しているものが殆どですが、こと西洋から伝わった卵や油脂、小麦粉を使う洋菓子はオーブンで焼く事を前提としたものが多く、大きなケーキを焼くのはさぞ大変だったことでしょう。
クエラピスも昔は炭を上に載せて焼き色をつけたとも言われています。
また、昔ながらの土釜の燃料にはココナッツの殻を使い、えもいわれぬ燻蒸の香りをもたらしたとも言われています。
いずれにせよ、その土地ならではの調理法に工夫を重ね、どんどん変化を遂げていったことは確かでしょう。
うんちくが長くなってしまいましたが、アジアに伝わったバウムクーヘンもどきのクエラピス。今はしっかり現地に根差し、愛され続けるお菓子となりました。これからもそんなお菓子を沢山研究していきたいと思います。
おまけですが、マレーシアのガソリンスタンドで売っていたオモチャのようなケーキ。
段々の中にはサンザシが入っていて、これもある意味クエラピスです。
これを見ると、「綺麗だからねぇ~」と答えていた人たちの意見も大いにアリかな??とも思ってしまいました☆
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- 無題
様々なクエラピスがありましたね。
マレーシア、シンガポールの人々は何故レイヤーが好きなのか?
クエラピスのみのレシピ本は目を見張る色使いで、レイヤーとレイヤーの間にモザイク模様があったりします。
気が遠くなるような作業です。
忍耐強く作り上げた後の切り口は「満足感」でいっぱいになります。たとえ失敗してもこれが醍醐味なんです。
まだまだ未知のお菓子がいっぱいですね。
マレーシア、シンガポールの人々は何故レイヤーが好きなのか?
クエラピスのみのレシピ本は目を見張る色使いで、レイヤーとレイヤーの間にモザイク模様があったりします。
気が遠くなるような作業です。
忍耐強く作り上げた後の切り口は「満足感」でいっぱいになります。たとえ失敗してもこれが醍醐味なんです。
まだまだ未知のお菓子がいっぱいですね。
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プラナカンを中心に、シンガポール・マレーシアの話題をお届け。食べ物・旅行の話題が中心です。
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HN:
Miki & Chie
性別:
女性
自己紹介:
シンガポールとペナンに住んで20数年、プラナカン協会会員です。ライター&コーディネート業務に携わっています。ご依頼・お問い合わせは下記ホームページからお願いいたします。
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