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マレー半島モンスーン寄稿
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今回、アリッサとともに最も期待に胸をふくらませていたのがスルタンのデザートです。王室のある場所に必ず美味しいスイーツあり!は定番ですからね。


「ジョホールらしい、スルタンのデザートを教えていただきたい」という私たちの我儘なリクエストに対し登場したのが「ブルーダル(Bludal・Bluder)」という焼き菓子と、「スルタン・ケーキ」の2種類でした。ちなみにこの「スルタン・ケーキ」とは「サゴ・プリン」のことで、スルタンの大好物が「サゴ・プリン」だったことから、「スルタン・ケーキ」と呼ぶようになったそうです。

「サゴ・プリン」はサゴ椰子のでんぷんから作られたタピオカに似た小さな粒状のものをプリンなどの型に入れて固め、それにた~~っぷりグラムラカ(パームシュガー)とココナッツ・ミルクをかけていただく冷たいデザートで、ニョニャ料理にも登場するポピュラーな一品です。ぷるるんとしたサゴがノドをすり抜けるたびに、ヒンヤリとした食感が楽しめるデザートですが、グラムラカのクオリティーがモノをいうデザートでもあります。
上質なグラムラカは日本の黒蜜にキャラメルを合わせたような濃密な味で、これにフレッシュなココナッツ・ミルクが加わると南国の甘い香りが鼻をくすぐり、脂っ気の多いマレー料理の後にはぴったりの、清涼感あふれるデザートです。


スルタンが愛した「サゴ・プリン」がマレー風デザートの代表格とすると、次に教えていただいた「ブルーダル」は西洋そのもの、と言ってもよい国籍不明?の大変興味深い焼き菓子でした。

聞くと前菜で紹介したアリッサとともに、ハリラヤの時にだけ登場する王室で大切にしているデザートだそうです。見かけは何の変哲もないパウンドケーキやカップケーキといった感じのものですが、レシピを聞いて少々びっくり。卵黄の分量がハンパないのです。約24センチ四方のケーキ型に対して20個ちかくの卵黄が入ります。これにバターを約1箱分と砂糖に粉。



ふんだんに卵黄を使う、というとスイーツ好きには即ポルトガルから来たお菓子では!?と思えてしまうのですが、興味深いのはイーストが加わることです。このお菓子はパンという位置づけでもあるのか?と興味津々。

低温で長時間じっくり焼くとオーブンから取り出した時に表面がトロ~り半生になり、「王家の人たちは焼き立てのトロけた部分をすくって食べるのが好きなんですよ!」と親戚の方がおっしゃる横で、80歳になるスイーツ担当の熟練の職人さんはぴしっと「私はしっかり焼いたものが好きですので」と半生焼きを却下(笑)。カップケーキ型で焼いたものと、ホールで焼いたものの2種類を作って食べさせて下さいました。

 

「半生」と聞くと、日本で一時期流行った半生カステラやパンデローを思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれませんが、味は似て非なるもの。もっとずっしり重たく少々ザラリとした食感に卵の風味が凝縮されたまさにヨーロッパの素朴な焼き菓子を彷彿とさせる深い味わい。ブリオッシュとパウンドケーキを足して2で割ったような、ユーラシアンのスージーケーキにイーストを入れたような。。。。卵黄たっぷりの断面は鮮やかな黄色をしています。



ブルーダルはインドネシアで比較的食されている焼き菓子ですが、イーストではなくTapei(タペイ)というキャッサバやもち米を発酵させた甘酒に似た風味を持つ食品を入れていることから、本来はもっと膨らみの少ない、タペイ独特の甘い芳香が加わったケーキだったのかもしれませんね。いずれにせよインドネシアがオランダ統治下時代にヨーロッパから伝わり、インドネシアの王室ともつながりのあるJB王室に伝わり大切にされてきたのが、このブルーダルという贅沢な焼き菓子と考えて良いかもしれません。紅茶と良く合う、妙にあとを引く印象深いお菓子でした。


2つのデザートを頂きながら感じたのは、王室から想像される飾り立てた華美なスイーツではなく、卵にバター、グラムラカに絞りたてのココナッツ・ミルクといった素材の味をじっくり味わうシンプルなデザートが好まれていたのには大変好感が持てました。シンプルなものほどテクニックを要するものですが、上質な素材を存分に使う事ができた特権ともいえるかもしれません。


さらにこの日はスルタンのご親戚のお婆様が作ってきて下さったクレーム・カラメル(焼きプリン)もテーブルに華を添えました。
これがまた素晴らしく美味で、写真を撮る前にすでに誰かさんが食べてしまったほど。




JBでこんなにおいしいクレーム・カラメルを頂けるとは・・・と思っておりましたら、後日購入した「Masakan tradisi Johor(ジョホールの伝統料理)」という本の中にこのクレーム・カラメルが載っていました。デザート1つとっても東西文化の交差点として栄えたJB独自の多種多様な食文化の一端を見ることができた気がいたします。



今回の旅でお料理からデザートまで教えていただきながら、マレーシアのスルタンの中でも別格の歴史を誇るジョホール王室、一皿ごとに研究心を駆り立てられる味付けや歴史的背景があり、JB王室の長大な歴史の一端を料理から紐解く喜びと、まだまだ知られていない料理が多いマレーシア、これからもっと研究しなくては!という気持ちでいっぱいになりました。
そして、この貴重な機会を設けて下さったご夫妻、スルタンのご親戚の方々に深く感謝申し上げるとともに、大切なレシピがこれからもずっと維持され守られることを心から願っています。


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  • selamat tahun baru
yayuk312 2012/01/01(Sun)21:51:28 編集
はじめまして。
今年もすてきな記事をたのしみにしております。
辛永清著「安閑園の食卓/私の台南物語」という本を読んでいたら、日本植民地時代後期から戦後にかけての台南の資産家一族の物話なのですが、まるでプラナカンについて書いてあるような錯覚に陥りました。福建省から台湾に渡った一族ということで共通点があるのでしょうね。ていねいで豪奢な暮らしぶりや料理などとても興味深かったです。

  • yayuku312 さま
Chie 2012/01/04(Wed)18:26:33 編集
新年最初のコメントを誠にありがとうございました。

辛永清さんの「安閑園の食卓」持っております!
しかし、はるか昔に一度に読んだだけで記憶がありません。
もう一度本棚から取り出してゆっくり読んでみようと思いました。素敵なコメントをありがとうございます。
どうか本年も宜しくお願い申し上げます。
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