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マレー半島モンスーン寄稿
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料理とは美味しさだけを追い求めるものではありません。

作ってくれた人の真心、その時一緒に味わった人たちとの語らい、様々な要素が一体となって味になります。

その思いは年齢を重ねる度にますます強くなってきました。


私が今でも忘れられない、心をゆさぶられる温かい味が、マラッカの古い建物の奥の奥、マラッカ川を背後に望むわずか一坪ほどのキッチンにありました。


彼らもプラナカンの取材を通して知り合った人たちですが、ニョニャ・ババではなく客家の人たちです。婚礼歳時用の洋品を代々扱うお店を経営する彼ら。
4人の兄弟姉妹とその家族が仲良くお店を守っています。

倉庫のような店内で可愛らしいテーブルクロスを探したり、ニョニャの籠を買ったり、中華風の極彩色の飾りを眺めたり、通う度に仲良くなり、話の行き着く先はやはり料理!!

もともと客家料理が大好きな私たちは、客家ならやっぱり『客家醸豆腐(ハッカ・ヨンタオフー)』、一度でいいから家庭で作るヨンタオフーを食べてみたい!!と聞いてみたところ、お母さんが昔よく作ってくれたけれど、手間がかかるから次にマラッカに来た時に作ってあげるね、必ず連絡をちょうだい!と約束をし、3ヶ月後に出会ったのが写真のヨンタオフーです。



お店で働く家族の夜ご飯として、店の裏口にある小さなキッチンで妹さんが腕をふるってくれました。

大きな寸胴鍋の中には大豆のスープがたっぷり!

具は厚揚げや湯葉、ビターゴーというゴーヤに似た野菜、それぞれの中に丁寧に豚のミンチが詰め込んであります。そして残った豚肉で作ったミートボール。
もちろん豚肉は挽き肉ではなく叩いて歯応えをしっかり残したもの。

屋台などで食べるヨンタオフーは詰め物がかまぼこだったり色々ありますが、客家のヨンタオフーはシンプルに豚肉だけ!

そしてスープも大豆とイリコなどで出汁をとった大変あっさりしたものでした。

一口スープを味わうと、雑味が全く無い澄みきった味。
ひとくち目は少々物足りなく感じましたが、そこでヨンタオフーを頬張ると中からぎゅっ~と豚肉のエキスが染み出て、いくらでも食べ続けられる飽きない味に、ああ、これぞまさに家庭料理!、と込み上げてくる感謝の気持ちとともに、ヨンタオフーを2杯おかわりした私たち。


食べている間にお兄さん、弟さん、お姉さんとそれぞれが時間差で、まるでお茶漬けをすするようにヨンタオフーをご飯にかけ、さらさらと胃袋に流し込み、あっという間に仕事場に戻って行きます。
小さな食卓の窓からは世界遺産の街をのんびり流れるマラッカ川の風景。



生活に根差した優しい味と人たちの笑顔、そして川辺をすり抜ける爽やかな風。それらが皆一体となって、今でも思い出すと胸がきゅんと熱くなる、料理研究の原点に戻らせてくれる家族の愛情がたっぷり詰まったマラッカの味でした。


次はいつリクエストしようかな?でも、とっておきのあの味は大切にしまっておきたい宝物かもしれません。
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  • 無題
Miki 2011/11/07(Mon)22:22:09 編集
客家の家庭料理はどういうわけか惹かれますね・・・
香港も客家系が結構多くて、大変美味しいお店があります。シンガポールではあまり美味しいところがないだけに、ないものねだり状態になってしまうのかもしれません。

うちも主人の母方の親戚が客家ですが、お婆ちゃん亡きあと、夢物語です。

ヨンタオフーに魚のすり身ってのは本式ではありません。やっぱり豚肉です。
親戚の話では、豚のひき肉に塩魚を加えるそうです。
  • 無題
アンティヒロ 2011/11/20(Sun)21:51:00 編集
目を閉じると今でもあの光景が浮かびます。
家庭料理って味が丸いですよね。
スープは飲み干せるほどまろやかでした。
J宅でも同じように感じました。
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