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マレー半島モンスーン寄稿
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住宅専門誌の取材でプラナカンの伝統家屋を取材することになり、私Mikiは久々にマラッカへ行っておりました。人が実際に住んでいる世界中の伝統家屋、古民家を紹介する特集記事のための取材です。

取材した家は一般宅ですが、私がマレーシア、シンガポールを含めても一番好きなプラナカン・ハウスで、とても保存状態がよく、昔のままの建材でメンテしています。インテリアの飾り方もシンプルながら、センスがとてもよいのです。
それでなくても、プラナカン・ハウスはやっぱりマラッカだな〜と思います。

さて今回は、いつも窓辺で外を眺めてるニョニャのお婆ちゃんとお近づきになれました。プラナカンはとても閉鎖的なので、近所付き合いには慎重です。たとえ隣、お向かいの家でも他人を家にあげたりすることはまずないのが普通です。このお婆ちゃんにはこれまでも何度か愛想を振りまいて「家に入れてもらえないかな」とチャンスをうかがって来たのですが、いつもカーテンを閉められていました。それが、今回取材した家の人が最近やっとその家に入れてもらえるようになったとのこと、では是非とも撮影用のお茶会にそのお婆ちゃんを呼んでみよう、ということになったのです。




お婆ちゃんは91歳で歯がないため、フガフガと言葉が聞き取りづらいのですが、よく聞いてみると英語はとても流暢です。お婆ちゃん、歯がないのに、席に着くなりニョニャ・クエを食べ出し、オンデオンデを20粒くらい平らげ、その後パウンドケーキを二切れも食べました。「歯がないのに、餅詰まらしたらどうしよう」と同時に、「撮影する前にクエがなくなっちゃう」と心配になりました(笑)。

しかしニョニャクエに対するあの執着心、そしてチェキーが大好きだというお婆ちゃんを見ていて、「こりゃ本物のニョニャだ」と嬉しくなり、思わず「ビビック!」と呼びかけると、「(ビビックと呼んでくれて)ありがとう!!」と大喜びされ、「あたしんちへいらっしゃい」と案内されることに。チェキーで財産つぶしたニョニャなんて資料や本では知っていたが、本物を目の前にして思わず「ビビック!」と呼んでしまっただけなのです。それにしても、お婆ちゃんは体が弱くて家からほとんど出たことがないという、絵に描いたような深窓のニョニャだったそうです。

お婆ちゃんちはヒーレンの海側のとても長いお屋敷ですが、もはや家の中はキンピカというわけではありません。しかし、応接間に入るや目に入ってきたのは大きなイギリス国王ジョージ4世の肖像画!!先祖の写真を掲げている家は珍しくありませんが、いまだに海峡植民地をひきずっている家はここが初めてです。家の中は伝統的なタイルで覆われ、その中には今まで見たことのないパターンのアールヌーボー調フローラルタイルがあり、一緒に入ったババの友人も「こんな柄は見たことがない」と驚いていました。そして各部屋にはお荷物のように放置されたアンティーク家具の数々。どれもススだらけですが、マラッカの骨董屋でウン十万円で売られているものと同じです。お婆ちゃんはしきりに「今度来たら、お前が好きなものは何でも・・・(フガフガ)」と私に話しかけるのですが、フガフガ部分が「あげる」なのか「見せてやる」なのかイマイチ不明でした(笑)。台所付近には私が欲しくてたまらない大きな水瓶が実際に使われており、そして何と薪で燃やす竃が健在だったのにも驚きです!!

お婆ちゃんはずっと「今度来たら、おまえの好きな物を・・・」をひたすらくり返していましたが、おそらく窓から外を眺めるだけのたいくつな毎日だったのが、突然やってきた外国人との触れあいに大興奮していたのでしょう。

マラッカのお宝はこうしたお年寄りだと思います。本よりも鮮やかにプラナカンのかつての暮らしぶりを語ってくれます。本だけじゃダメ、もっと彼らに口を開かせなきゃいけない、と思いました。

お婆ちゃんがいつまでも元気に、そして私のこともずっと覚えていてくれるよう(笑)、強く強く願います。
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  • 無題
Chie 2010/05/03(Mon)21:10:42 編集
Mikiさん

私がペナン、みきさんがマラッカと入れ違いに近い旅でしたね。
プラナカン研究における最大の仕事は、Mikiさんがおっしゃる通り本物のプラナカンから聞く話の数々です。現場に勝るものは無し!と毎回思います。
特に古き良き時代を知るビビックやババ(80歳以上のお年寄り)の方々の昔話を聞くことは本には書かれていない面白い情報や、言い伝えが満載です。
それを後世に伝えられるよう書きとめることも私たちの役目だと思います。
閉鎖的なプラナカンは噂話が外に漏れることのない外国人の私たちに本音を語ることも多々。これは実に興味深くありがたいこと、と毎回思います。

  • 無題
Miki 2010/05/04(Tue)11:28:19 編集
Chieさん

そうなんです。外国人だからこそ話が聞けるのだ、とよく感じますし、ババの友人にもよく言われますね。「あたしたちだったら、話してくれないわよ」と。
同じマラッカに長年住んでいたって、あの家にあんなタイルがあるなんて知らないんです。一緒に入ったババの方は、実はその家の大叔母さんとは親戚関係なのに、今回初めて家に入ったのだそうです。私のおかげ(笑)?
これまでもよくマラッカの友人が「ここは母方の親戚」「あっちは父方の叔母の家」とヒーレンの家々を指差すのに、その家の中を見せてもらう機会なんてまずなかった。それほど排他的なんですね。

でも、住人の側から言わせると、とくに最近は骨董品めあての泥棒が多いため警戒心が強くなっているのでもあり、また、ちょっと油断して鍵をかけ忘れたら、旅行者がずかずかと家の中に入って来て「中を見たい」と言われて困った、という話もききます。呼び鈴をおされることも多いとか。いくら歴史的建造物といえ、一般のお宅なのですから、その辺の配慮はないといけませんね。
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プラナカンを中心に、シンガポール・マレーシアの話題をお届け。食べ物・旅行の話題が中心です。
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シンガポールとペナンに住んで20数年、プラナカン協会会員です。ライター&コーディネート業務に携わっています。ご依頼・お問い合わせは下記ホームページからお願いいたします。
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