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マレー半島モンスーン寄稿
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混血人種を指す言葉に「クレオール」という単語があります。さまざまな定義があり、黒人と白人が混血した人種をさすとか、植民地生まれを意味するとか、アメリカのルイジアナ州においてフランス、アフリカ、スペインと先住民の混血をさすとかいろいろです。とくにクレオール料理というと、ニューオリンズの伝統料理を指すことが多いようです。

文化人類学者の石毛直道氏によれば、
「言語学におけるクレオールとは、複数の言語が接触することによってできた混成語のことで、それを母語として生活する人々の存在を前提している」なのだそうです。この定義にあてはめるとすれば、私たちが研究するプラナカンはクレオールと呼んで間違いないでしょう。

外国文化の影響を受けた文化は世界中にざらにありますが、こんな小さな地域にプラナカン、クリスタン、はたまたチッティーのようにクレオールの定義にあうグループが3つも存在するマラッカは世界でも珍しいケースなのではないでしょうか。どれもがクレオール語(混成語)を持ち、500年以上も独自の文化を維持してきたマイノリティーグループです。

プラナカンは今日もまだ豊富な財力を持つ家が多いので比較的文化が維持できている方だと思いますが、衰退の一途をたどっているのがクリスタン(マレーシアン・ポーチュギース)とチッティーです。今回のマラッカ訪問では、マラッカに残る古いチッティーChittyの村へも訪問しました。

IMG_1763.jpgチッティーとはインディアン・プラナカンとも呼ばれる、タミール商人の血を引く混血グループで、主にマラッカとシンガポールに存在しています。15世紀のマラッカ王国に南インドのタミール・ナドゥから移民した祖先を持っています。マラッカ王国が崩壊すると、南インドへの行き来がまったくなくなり、土着化しました。彼等はタミール語まじりの独特なマレー語を母語としますが、多くがイスラムではなくヒンドゥ教徒です。
※ちなみにチェッティーとかチェッティヤーと呼ばれるインド系の人々もいます。私は最初混同していましたが、まったく別のグループです。おもに金貸し業を営んでいるグループがチェッティーです。

左)チッティーのヒンドゥ教寺院




チッティー博物館

マラッカのチャイナタウンから程遠くない地域にKampung Gajah Berang という村があり、そこにチッティーのコミュニティーが残っています。しかし、わずか十数世帯と3つの寺院を残すのみです。このエリアには一応チッティー博物館がありますが、ババ博物館などとは比べ物にならないほどお粗末なものです。

チッティーのおばさんが管理人で一生懸命案内はしてくれますが、マレー語がたくさん混ざるので聞き取りにくいだけでなく、展示の説明がマレー語だけなのもどうかと思います。それでも展示を見ると、チッティーたちがいかにチャイニーズ・プラナカンと酷似した衣装を着ていたかなどがざっとわかります。

このあと私たちはポルトガル人の末裔の人たちが住む村を2カ所訪問しましたが、この人たちの話をきくにつけても、マレー人種以外の人種(中国系、インド系含め)の文化が保護されていない現実を目の当たりにしました。

しかし幸いマレーシアにはマレーシア文化遺産保護のNPO組織であるバダン・ワリサン・マレイシア(Badan Warisan Malaysia)や、民間人が組織するペナン・ヘリテージ・トラスト、マラッカ・ヘリテージ・トラストなどが存在し、活発に機能しています。

こういったNPOやNGOの団体、民間人の研究グループの活動対象は歴史的建築物の保護が主ですが、マイノリティー・グループの消え行く伝統文化の保護にもより力を入れて欲しいものです。

シンガポールに移住したチッティーのグループが今度プラナカン協会のようにチッティー協会を設立するという話を聞きました。本人たちも危機感を強く感じているのでしょうね。
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  • 無題
bashy 2008/02/21(Thu)14:32:06 編集
聞けば聞くほど、マレーシア、奥が深いですなー。
次の時代はマレーシアかしら?
  • 無題
Chie 2008/02/21(Thu)15:11:55 編集
Bashyさん

いつもコメントをありがとうございます。

人種のるつぼ、と言われるマラッカは特に面白いですね。
道を歩いていたら、明らかにヨーロッパ系の顔立ちをした人がいたので、聞くとポルトガル人の末裔クリスタンだと言ってました。
顔はポルトガル風でも流暢なマレー語と英語とクリスタン語を話します。とっても不思議な感じがしましたが、考えてみたらプラナカンも顔はチャイニーズでも独特のババ・マレー語と英語を話しますし。

ポルトガル人の末裔が話すクリスタン語も大変興味深く、超レアものと言えるクリスタン語のCDと本を買ってしまいました。

ポルトガル語に彼ら独自の言葉を混ぜ合わせた、まさにマラッカが生んだ「クレオール語」です。

確実になくなりつつあるマイノリティー・グループの文化や言語を少しでも残していこうという働きは本当に大切なことだと思います。

  • 無題
Miki 2008/02/21(Thu)15:25:21 編集
あまり日本には知られていないだけで、マラッカは大航海時代の世界史の中でももっとも「ホット」な都市の一つだったんです。

・・・と、かくいう私もこちらへ来るまで知りませんでしたが。
  • 無題
Nelly 2008/02/22(Fri)01:19:56 編集
マラッカって知れば知るほど面白そうなところですね。
どうして日本からマラッカを旅するツアーってないんでしょうか?
昔、シンガポールからマラッカ日帰りツアーに参加した友人が、もぬけのカラのポルトガル要塞?に、面白くもないでっかい船??、そしてクソ暑い中、丘の上を延々歩かされて死にそうになった、と言ってましたが、
プラナカンの屋敷とか見ないんでしょうかね?そういうツアーでは。
だとしたら本当に宝の持ち腐れとでもいう場所ですね。旅行代理店もプロモートが下手なんじゃないですか?
  • 無題
2008/02/22(Fri)04:38:33 編集
わたしはてっきりニューオリンズ関係の固有名称と思い込んでいました

目からうろこでした

勉強になります
  • 無題
Miki 2008/02/22(Fri)11:46:46 編集
補足したいと思います。

しかし、やはりプラナカンを人種の上でクレオール(混血)だと考えるのは問題です。異人種との婚姻はほんの初期、あるいは一部で、第2、第3世代以降は同じプラナカン同士か、中国人とのみ婚姻したそうです。また、マラッカのあのタンチェンロックの家に行くと初代の写真がありましたが、夫も妻もどちらも中国系でした。そこの家でマラッカの研究者も言っていましたが、混血というキーワードばかりにとらわれると誤解を生じます。

混成語を持つということでは当てはまります、と考えてください。

クリスタンの場合はポルトガルの血はほんの初期のみ、あとはマレーやインド系の血が濃くなり、現在ではインド人かまたはマレー人となんら変わりない風貌の人が多いです。チッティーなんか日本人の目には区別つかないですね。
  • Nellyさん
Miki 2008/02/22(Fri)11:53:12 編集
そうですね。私も初めて行ったときはそんなところにしか行かなかったので、超がっかりしました。
やけに熱くて、お粗末な観光アトラクションしかないじゃん!二度と来るか!と思ったものです。

でもプラナカンを研究するようになってチャイナタウンを探索したらすごく気に入りました。
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